アマチュア無線

2012年5月22日 (火)

《太陽黒点数 極小期》到来の衝撃

5月20日(日)に放送されたNHKスペシャル宇宙の渚 第2集 天空の女神 オーロラ」は衝撃的なものでした。

内容そのものは国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された地球の風景を切り口に様々な分析を紹介していくもので, この日は「オーロラ」がテーマでした。ISS(上)から見るオーロラもやはり幻想的なもので, またどのような仕組みでオーロラが発生するかなどオーロラにまつわる雑学が詳しく解説されており, 飽きずに楽しめました。

ところが, この番組の中で私に取っては衝撃的な見通しが報告されました。

「太陽黒点の増減周期が通常は『11年』であるが今期の周期は『13年』に変動している。これは過去に見られた『マウンダー極小期』(1645~1715年ころ)と同様のもので, 今後, 太陽黒点数極小期に移行していくと判断される。」

と言った感じの解説でした。

太陽黒点数 今後の推移 イメージ図
太陽黒点数 今後の推移
※「○○○○○」の部分は極小期確定後に名称が入る。

1860年以降の太陽黒点数の変化。第11~24活動周期の変化が分かる。
(c) データ : SIDC、作図 : 宇宙天気ニュース
1860年以降の太陽黒点数の変化

「マウンダー極小期」には太陽黒点数の減少が遠因で寒冷となり, 多くの飢饉が起きたと考えられているようです。つまり極端に寒くなる…と。地球が温暖化していると言われる現代で寒冷化がどのように影響するのかは分かりませんが, 何となくイメージでは寒冷化の方が勝ってしまいかなり寒くなるのでは, と想像します。

で, 問題は寒冷化のことでは無く(いや寒冷化も大問題ではありますが), 太陽黒点数の極端な減少によるアマチュア無線活動への影響です。

太陽黒点数と電波状態が密接に連動していることは昔から知られています。一般的に, 太陽黒点数が増加すると電離層の電離度が高まり反射能率が上がるため短波(HF)帯での遠距離通信に都合が良くなります

極論すれば「豊かなアマチュア無線活動のためには, 太陽黒点数はいくらでも多い方が良い」と言うことになります。
※太陽黒点数が増加した場合, 磁気嵐などの弊害も出ますので一概に「善」とは言えません。

太陽黒点数の増減の山は「サイクル」と表現されており, 1755年から始まる活動の山を「サイクル1」とし, 今現在は「サイクル24」の最活動期(もっとも黒点が多くなる時期, 山のてっぺん)に近づいています。

そして, この「サイクル24」を最後にその後の数10年間, 殆ど太陽黒点数が「0」になると予言されたわけです。「サイクル」が消滅すると。

アマチュア無線家に取ってサイクルは「季節」のようなものです。寒い日もあれば暑い日もある。山もあれば谷もある。11年周期と長いですが, 季節に合わせて活動を楽しんできました。

それが, 今後数10年間「冬」が続くと言っています。

寒冷化すればアマチュア無線どころでは無いのかも知れませんが, それにしても考えただけで恐ろしい事態です。太陽黒点が0になると短波帯の電波が反射しにくくなり遠距離(日本全国や海外)と交信出来ません。無線機で受信しても入感がありません(相手局が聞こえない, 聞こえないから交信出来ない)。バンド(周波数帯)全体が静まりかえった状態で無線機が壊れているのでは? と思うほどです。そう言う状態が何10年も続く。

もし, 若い方がアマチュア無線に興味を持ったとしても, 楽しみ方の半分くらいが奪われた感じになります。これでは無線人口はさらに減る一方でしょう。非常に暗い未来が待っています。

さて, なぜ私自身がこのことを大問題としているかと言うと,「退職後により一層, 思う存分ラジオ少年, アマチュア無線と言った無線関連の趣味の世界にのめり込む」ことを生き甲斐としているからです。そのために少しずつですが営々黙々と準備をやっているわけです。ビンテージ無線機を集めるだとか, 鉄塔を建てるとか, 必要な書籍を買い込むとか。

その前提が土台から全て崩れ去るわけです。今までいったい何をやって来たのか? これからどうすれば良いのか?

先月には「太陽の極域磁場が4極化」との報道もありましたし, 太陽に異変が起きていることは確かなようにも思えます。おそらく5, 6年後には「○○○極小期」に入るかどうかが見定まるでしょう。

例え電離層の状態が最悪で電波が飛ばなくなっても, それなりの楽しみ方が模索されることでしょう。また, 極小期の寒冷化は太陽風が永続的に弱まることで宇宙線の量が増え雲が厚くなるため, と解説されていますので宇宙線が増えるなら逆に電離層にプラスの要素になることは無いか? とも思えます(理屈は分かりませんが…)。

なので絶望的な展開では無いとも言えます。おそらくここ数年でどう言う未来になっていくか理屈付けされアマチュア無線の世界でも様々な方向性が定まっていくでしょう。

「どうあるべきか」を考えるのはそれからでも遅くないかも知れませんが, アマチュア無線, ラジオ少年とは別方向の楽しみ方を, 今から築いていく準備が, 必要かも知れません。

ところで電離層伝搬型無線通信が難しくなると言うことは, 電離層反射の電波が微弱になると言うことであり, 微弱電波をいかに確実につかまえるかの戦いになると思われます。

私が予想するアマチュア無線の未来
1)人口の電磁ノイズに悩まされている都市部居住の無線家が退職後大挙
 して過疎地域に移住する。
 あるいは最先端のリモートシャック(無線機機器の遠隔操作)システム
 を駆使して, 人口密度の低い地域の機器類を借りて運用するとか。
2)今以上にHF帯大型指向性アンテナの需要が増える。
3)超ハイパワー化が一般化する。
4)微弱信号の復調性能が弱いDSP(デジタル)無線機から超高級アナログ機
 へ回帰する。
5)微弱信号に強いCW(電信)モードあるいはデジタル通信が人気となる。

さて, 呑気に10数年後の趣味の危機感を長々と書いたのですが, 寒冷化が本当だとするとそれ所では無いですね。

思いつく限りでも下記の全世界的な懸念事項があるわけですが, 寒冷化で飢饉発生, 経済の大停滞とかあると一気に懸念事項が表面化し大混乱となり, 暴動とか戦争とか…

●日本の国債暴落
●ギリシャ破綻, EU各国の連鎖破綻
●中国の急激な盛衰
●尖閣諸島問題
●南シナ海の領有権問題
●北朝鮮問題
●第3勢力の台頭(イスラム系?)
●イスラエルのイラン核施設空爆
●サイバーテロ
●インフルエンザパンデミック
●さらなる大地震, 大津波
●異常気象

私は電気関連のサラリーマンですが, 上記の一つでも現実になればたちまち会社が吹き飛んでしまいそうです(それ以前に危ないのですが…)。

そう考えると, 趣味以前に副収入の道を本気で模索すべく時間を割くべきかも知れません。いや, もはや趣味とか棚上げしてどうやって生き残るかを考えるべきかも知れません。

唯一救いがあるとすれば「日本が世界最大の資源国へ! 日本の領海から3京3200兆円分の天然ガスが発見される」ってとこでしょうか?

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2012年3月11日 (日)

アンテナアナライザー《AA-1000》2.6GHz拡張

リグエキスパートジャパン社の日下社長から朗報が届きました。

今月発売されたばかりのリグエキスパート最新型アンテナアナライザー「AA-1000」について, 周波数の計測上限が1GHzとなっていますが, 何と「2.6GHz」まで拡張出来るそうです!

現在のところ性能保証外で, AA-1000単体では1GHzまで, Windowsソフト「AntScope」からの制御で2.6GHzに拡張可能です。

早速試してみました。残念ながら2.4GHzのアンテナを持っていなくて, とりあえずダミーロードとディスコーンアンテナについて2.6GHzまでのSWR特性を取得しました。

●ダミーロード narda MODEL 370 BNM DC-18GHz PWR 5W Nコネ
●ダミーロード コメット D21M DC-600MHz PWR 15W VSWR<1.15 Mコネ
●ディスコーン コメット CDS-150 25~1300MHz Mコネ
※Mコネは変換コネクターを使用していますが校正はしていません。

まず, お断りがあります。
★1GHz以上の測定精度はメーカー保証外です。
★よって下記SWRグラフは1GHz以上において全て「参考値」です。

AA-1000 2.6GHzまでのSWR
AA-1000 2.6GHz計測

グラフを眺めて
・全体的に計測は出来ているようです。
・但し, 1.2GHzあたりから精度が落ちている可能性が
 あります。
・Nコネのダミーロードは2.45GHzあたりでSWRが高いです。
・Mコネのダミーロードとディスコーンアンテナは2.4GHz前後で
 同じパターンのグラフの乱れがあります。おそらくNP-MJ変換
 コネクターの影響と思われます。なお, 別の変換コネクター
 に交換しましたが同じ表示でした。そもそもMコネでGHzの
 使用, 計測は常識的では無いと思います。

2.45GHzあたりの計測はSWRが高く出る可能性がありますが「アマチュア無線用の1.2GHz/2.4GHzアンテナ製作などのチェックには十分に使える」と考えます。

なお, 簡易スペアナ「GigaSt Ver.4」につないでAA-1000の出力を計測してみました。GigaStは昨年12月にAgilentの4GHzシグナルジェネレーター「E4422B」を使って4GHzまで-10dBmでレベル調整しています。但し, 調整の過程で分かったのですが, 2GHzころから徐々に周波数がズレていくようです。4GHzで0.8MHzのズレ(200ppm)。E4422Bの方がよほど高価で精度が高いでしょうからGigaSt側の周波数ズレと思います。また, レベルもおおざっぱにしか調整出来ません。おそらく最大10%くらいの誤差はあると思います。

GigaSt レベル調整
GigaSt レベル調整

AntScopeでAA-1000を「RF出力モード」にして100MHzと2.4GHzを出力してみました。

AA-1000出力 100MHz
AA-1000出力 100MHz
AA-1000出力 2.4GHz
AA-1000出力 2.4GHz
取説に「200MHzまでは基本波が、200~600MHzに於いては3次高調波が、600~1000MHzに於いては5次高調波がそれぞれ使われています。」とありますので2.4GHzは9次以上とかの高調波と思われます。

100MHzは-8.9dBmで定格(-10dBm)通りのようです。2.4GHzは-43dBmでした。
出力は出ているようです。なお, AAシリーズの周波数精度はppmレベルと聞いていますので高精度のSGとしても使えそうです。

4年前に鉄塔を譲って頂いたJA7のOM様が筋金入りのアマチュア無線家で, 山腹に広い土地を借りて鉄塔を建てアマチュア無線家なら誰もが夢みる別宅シャックを築いておられましたが, 数km先の見通し範囲に自宅があり, 2.4GHzの無線LAN経由でネット環境を構築していました。IO-DATA?の屋外機器を送受信機として, 25エレくらいの八木アンテナをつないで通信していました。しかし, いかんせん送信出力が合法10mWと超小電力だったこともあり, LAN接続の安定性はいま一つだったようです。もしかすると最新の機器はもっと性能が向上しているかも知れませんが, 2.4GHz帯について伝送線路も含めたアンテナ系の特性を把握出来る環境が欲しいと, その時から切望していました。

保証外とは言え, 今回の拡張で労せずして1.2GHz/2.4GHzを計測出来る環境が手に入りました。
大満足です(^_^)/

新型アンテナアナライザー《AA-1000》購入
アンテナアナライザー《AA-1000》使用感 その1
リグエキスパート《AA-1000》使用感 その2 較正
RigExpert《AA-1000》使用感 その3 画面表示

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2012年3月 1日 (木)

RigExpert《AA-1000》使用感 その3 画面表示

リグエキスパートの新型アンテナアナライザー「AA-1000」の売りの一つとして「高解像度カラー液晶」が上げられます。

従来機 AA-230PRO モノクロ  128x 64
新型機 AA-1000   カラーTFT 320x240

実に9倍以上のドット総数となります。

この高解像度カラー表示により下記メリットがあります。
1)メニュー表示などの漢字化
2)視認性の良いグラフ表示
3)スミスチャートの表示

AA-230PROと画面を比較してみるとそのメリットが良く分かります。

AA-230PRO 設定画面 AA-1000
AA-230PRO 設定画面 AA-1000 設定画面
AA-230PRO SWRグラフ画面 AA-1000
AA-230PRO SWRグラフ画面 AA-1000 SWRグラフ画面
AA-230PRO RXグラフ画面 AA-1000
AA-230PRO RXグラフ画面 AA-1000 RXグラフ画面
AA-1000 スミスチャート画面
  AA-1000 スミスチャート画面

高解像度カラー表示の最大のメリットは何といっても「スミスチャートの表示機能」でしょう。私の知る限りでは安価(10万円以下)な携帯型高周波計測機器でスミスチャートを直接表示出来る機種は今まで無かったと思います。その意味では画期的と言えます。

さて, 携帯機器上で「スミスチャート」が表示出来るとして, じゃあその結果何が出来るのか?

あれれ? 実は良く分かりません(^^;

お恥ずかしながらスミスチャートを使ったことが無い。スミスチャートは「高周波設計者の必須ツール」とか紹介されていますが, そういう経験も無く, 今まで必要性が無かったため, どう使いこなすのか分かりません。

一応ネットでスミスチャートの解説を読みましたが, 今いちピンとこない。ならば, と手持ちの書籍「基礎から学ぶアンテナ入門/CQ出版社」を引っ張りだしてきて末巻に載っているスミスチャートの解説を読んでも…分からない。だいたい, いくら初心者向け(私は初心者? ^^;)とは言え, いきなり末巻から読んでもしょうが無いですね。

基礎から学ぶアンテナ入門/CQ出版社

まあ, たぶんAA-1000のスミスチャート表示も, 見る人が見れば十分役立つものなのでしょう。

なお,リグエキスパートのアンテナアナライザー, AAシリーズ全機種で「AntScope」と言うWindowsソフトを使えばSWR, RX, スミスチャートをパソコン画面上でグラフ表示出来ます。また, 計測生データ(周波数, R, X)をcsvファイルにエクスポート出来ますので, 他のソフトでも活用出来ると思います。

ところで, 本日初めて「基礎から学ぶアンテナ入門」を読んだのですが, 著者プロフィール欄でJR1XEV/吉本猛夫さんが述べられている自信の信条として下記言葉が載っていました。

発想はアマチュアのごとく,作業はプロのごとく
[3月2日追記]
「プロ」とは技術・品質・納期・コストを指すようです。

私もこの言葉を噛みしめ明日の糧としていきます。

新型アンテナアナライザー《AA-1000》購入
アンテナアナライザー《AA-1000》使用感 その1
リグエキスパート《AA-1000》使用感 その2 較正
アンテナアナライザー《AA-1000》2.6GHz拡張

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2012年2月26日 (日)

リグエキスパート《AA-1000》使用感 その2 較正

リグエキスパートのアンテナアナライザーとしては初めて搭載された新機能「キャリブレーション(Calibration/CAL/較正)」についてレポートします。

AA-1000の較正機能は計測値のズレを修正するとかの単純なものでは無く, 伝送線路のロスを補正するためのものです。

以下, AA-1000の取説, 16ページから引用です。
-------------------------------------------------
リグエキスパートAA-1000は較正しなくても精度の高い測定ができるのだが、「開放-短絡-負荷」法による較正を行えばより精度の高い測定ができるようになります。
較正に使われる3つの基準「開放-短絡-負荷」は高精度でなければなりません。特に100MHz以上ではこの要件が重要になってきます。通常、負荷として高精度の50Ω抵抗が用いられます。3つの基準「開放-短絡-負荷」が接続されるところを基準面と呼んでいます。もし、アナライザーから離れた伝送路端で較正が行われると、アナライザーはアンテナなど被測定物の測定結果から伝送路の影響を差し引いた、より真値に近い負荷パラメータを表示します。
-------------------------------------------------

上記の解説からAA-1000は, 高価な高周波計測機器が普通に備えているような較正機能を搭載したと推測されます。


さて, この較正機能をどのように位置づければ良いのか? やった方が良いのか, やるとすればどう言う場面なのか? など, AA-1000を使い始めると最初に感じる疑問です。なので, この点を見極めておきたい。


実験にあたって,「伝送路の影響を差し引く」と説明がありますので, ならば, 思いっきり影響が出そうな「伝送線路」を用意します。

私が用意したのは計3本, 30mの同軸ケーブルと計7個の変換, 中継コネクターです。

ケーブル(両端コネクター付き)
10D-2V       20m 新品 1本
10D-2V        9m 中古 1本
BNCケーブル   1m 新品 1本
           計30m

変換, 中継コネクター 計7個
MP-BNCJ 1個
MJ-BNCP 1個
MJ-BNCJ 1個
MJ-NP   2個
NJ-BNJ  1個
MJ-MJ   1個

挿入したコネクター
挿入したコネクター

このケーブルとコネクターをつないで長さ30mのケーブルを準備しました。

長さ30mのケーブル
長さ30mのケーブル

このケーブルを私の自家用車に取り付けてある144MHz/430MHzのモービルアンテナ+約4mの3D-2Vケーブルに延長接続します。

下記グラフは, 30m+約4mのケーブルの終端をオープンで(アンテナを外して)AA-1000でTDR(時間領域反射計)計測したものです。TDRはケーブルの長さや損失を計測出来る機能です。

すべてのケーブル, コネクタを接続した場合のTDR計測値
すべてのケーブル, コネクタを接続した場合のTDR計測値

このグラフから下記が分かります。
1)ケーブルの全体の長さは33.5m。
2)グラフ線の途中に縦方向の小さな波が3箇所あり, 変換, 延長
 コネクターのところで不連続となり損失が発生している。
3)ステップ応答のグラフ線が線路の長さに比例し右肩下がりで,
 大きな損失になっている。
 ※グラフ右肩下がりの始点がグラフ左側のBNC変換コネクター
  の箇所であり, おそらくここでミスマッチが起こり定在波が
  発生し悪さをしていると思われる。
 [2月26日追記]
 もしかすると, BNCコネクターが緩んでいたのかも知れません。

もはや同軸ケーブルと言うよりも, インピーダンスマッチングミス発生装置+アッテネーターと言えるかも知れません。

ちなみに下記は20mの新品10D-2Vケーブル単体のTDR計測値です。グラフ線が水平で損失がほとんどありません。

20mの新品10D-2V
20mの新品10D-2V
20m新品10D-2V TDR特性
20m新品10D-2V TDR特性


「較正」は開放(オープン), 短絡(ショート), 負荷(ロード)の順に専用の計測をおこなうとその後, 自動で補正値が適用されるようになります。

開放
アンテナを外してケーブル終端を開放し計測します。

ところで, アンテナ接続端はMコネクターですが, 今回はNコネクターのダミーロードを使用したため, 較正時はさらに変換コネクターが必要になりました。しかもちょうど良い1個のコネクターが無くて, 3個のコネクターを使っています(銀色の長い物体が変換コネクター3個)。そのため, 「本来の較正値ほどの精度は出ていない」と思われます。
変換コネクターを使わないようにするために, 非常に高周波特性の良いMコネのダミーロード/終端抵抗が必要ですが, 残念ながら手持ち4個のMコネダミーロードはどれも高周波特性が悪く使えませんでした。
1GHz以上まで高精度(SWRがほとんど1)でかつ安価なMコネの終端抵抗があれば是非ご紹介頂きたいです。

校正 開放時

短絡
出来るだけ電気的なループが発生しないよう短い導線で短絡します。

校正 短絡時

負荷
出来るだけ高周波特性が良いダミーロード(較正用の負荷, 終端抵抗)を取り付けて負荷の計測を行います。今回は「narda MODEL 370 BNM DC-18GHz PWR 5W(Nコネ)」を使用しました。

校正 負荷
負荷計測時の画面表示
負荷計測時の画面表示


144MHz, 430MHzそれぞれについて下記順でSWRのデータを取得します。
1)モービル運用で通常使用している4mケーブルのみの場合(較正未)
2)4m+30mケーブルで較正前を計測(Before/ビフォー)
[ここで較正を実施] ※144MHz, 430MHzそれぞれで較正しています。
3)4m+30mケーブルで較正後を計測(After/アフター)

モービルアンテナをつないだ状態
モービルアンテナをつないだ状態

下記は144MHz, 430MHzそれぞれのSWRグラフです。
較正前の計測値は衝撃的です。もはや何を計測しているのか分かりません。
それに対して較正後は短い4mケーブルに近い値が出ています。
一目瞭然。通常では考えられないような損失発生装置のロスでさえ, ある程度補正していますので, 通常のケーブルであればほぼ完璧に補正し, アンテナの特性のみを浮き上がらせてくれると思います。すばらしい。

モービルアンテナ 144MHz帯 AA-1000 較正前後のSWR比較
モービルアンテナ 144MHz帯 AA-1000 較正前後のSWR比較

モービルアンテナ 430MHz帯 AA-1000 較正前後のSWR比較
モービルアンテナ 430MHz帯 AA-1000 較正前後のSWR比較


で, この高度な校正機能はアマチュア的に必要なのか?

まず, すでに設置されているアンテナについて, その終端でケーブルからアンテナを外して較正する作業は, たいていの場合は屋外の高所作業で, かつ, 防水用のビニールテープや自己融着テープを外すなど非常に面倒であり, 命の危険すらあります。

また, 送信機から出力された電力が最小限のロスでアンテナから電波として放出されることが, そもそもの目的, 目標ですので, だとすれば伝送線路も含めたアンテナ系全体の効率を計測, 把握することが, アマチュア的なアンテナアナライザーの活用方法だと思います。

アマチュア無線家がAA-1000を普通に使うのであれば「校正機能はさほど重要では無い」。そう考えます。

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[4月3日 追記]
自作派のOM様からご指南頂きました。
アンテナの自作において, AA-1000の校正機能は非常に重要なものとのことです。アマチュア無線家にとっても校正機能は使えるアイテムなんですね。
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但し, 例えば無線関連のメーカーやハムショップなどプロの方からすると, 次々とアンテナを交換してその性能が規格に納まっているかのチェック, 試験を行う場面などでは一定期間あるいは天候の差で都度, 伝送線路のロスを補正する必要があり, AA-1000の較正機能は大変重宝するものでしょう。

立場やどのような場面でアンテナアナライザーを使うかによって較正機能の役割, 重みが変わってくると言うことを理解しました。

AA-1000の守備範囲はマチュア無線家もさることながら, むしろプロ向けを意識したものなのでしょう。使い勝手の良い大きさや操作性でありながら, 1GHzの超高周波, 妥協の無い高性能/高機能, 高解像度液晶, 較正機能, 高額な価格… AAシリーズがプロでも活用され始めたことで, そのニーズをくみ取って出来上がったものが「AA-1000」だったのかも知れません。

ところで, 今回の実験で一番の収穫だったことは, 当たり前なんですが「余計なコネクターや長いケーブルはロスになる」と言うことを身をもって経験したことです。その意味では,「TDR(時間領域反射計)計測」が重要な機能の一つと言えます。あるいはスミスチャートなど持っている機能を最大限に活用することでアンテナ系の全体像が見えてくると思います。今後, その点にも焦点をあて実験を積み上げていきます。

新型アンテナアナライザー《AA-1000》購入
アンテナアナライザー《AA-1000》使用感 その1
RigExpert《AA-1000》使用感 その3 画面表示
アンテナアナライザー《AA-1000》2.6GHz拡張

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2012年2月13日 (月)

アンテナアナライザー《AA-1000》使用感 その1

先日届いた新型アンテナアナライザー, リグエキスパート「AA-1000」について, 手持ちの「AA-230PRO」との計測比較を交えて使用感をレポートします。

AA-1000の大きな特徴と言えば
1)1GHzまで計測
2)カラーTFT 320x240
 従来のモノクロ128x64に比べドット総数で9.3倍の情報量
 しかもカラー

よって主にこの2点に注目し評価, レポートしていきたいと考えています。

なお, 本来であれば使い勝手など初めて手に取った時点からの感想を述べるべきですが, すでにAA-230PROを使用しており, ほとんど使い勝手に差が無いため割愛します。使い勝手についてはAA-230PROの記事を参照願います。

まず外観ですがAA-230PROと並べたところ同じ大きさ, 形状のようです。
重さはAA-1000がAA-230PROより50gほど軽いです。
 AA-230PRO 510g(電池4本分込み)
 AA-1000   466g(電池3本込み)
おそらく, AA-1000の方が1本電池が少ないのでその分が効いていると思います。
AA-1000/230PRO外観比較

画面比較です。サイズはAA-1000の方が横方向が若干小さくなっています。
AA-1000については320x240の圧倒的な情報量を生かして, リグエキスパートジャパン社の日下社長がメニュー表示の漢字化を進めています。下記写真で比較し一目瞭然, 非常に分かりやすく漢字化のメリットは大きいです。但し, メモリー容量が限られているそうで苦労があるとのことです。
AA-1000/230PRO画面比較

ちょっと見づらいですが各アンテナアナライザーの画面です。

AA-1000の画面
AA-1000画面

AA-230PROの画面
AA-230PRO画面

AA-1000の高画質カラー液晶表示について, そのメリットなどを後日さらに評価予定です。

次はダミーロードとディスコーンアンテナの計測結果です。

まず注意点があります。
1)AA-1000はNコネクター, AA-230PROはMコネクターです。
 それぞれで変換コネクターを介在する場合があり, その分精度に
 影響すると思われます(同じ条件での比較は出来ない)。
2)AA-1000は100MHz以上の計測精度を高めるためにキャリブレーション
 (較正, 以下「CAL」と表記)機能を備えていますが, まだ挙動が安定
 せずデバッグ段階にあるようです

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[2月18日 追記]
私の認識不足があり, キャリブレーションの動作に問題はありませんでした。
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よってあくまでも下記計測結果は参考値として見て頂きたいです。

1.ダミーロード計測
 計測に使用したダミーロード
 ●narda   MODEL 370 BNM DC-18GHz PWR 5W Nコネ
 ●コメット D21M DC-600MHz PWR 15W VSWR<1.15 Mコネ
使用したダミーロード

 1)MODEL 370を使ってAA-1000/AA-230PROを比較
  AA-230PROは適当なN型変換コネクターが無くて, 変換コネクターを
  3個介在しているため参考値です。当たり前ですが変換コネクター
  が多いほど精度が落ちます。以前に色々試していて経験済みです。

  変換コネクターの件を差し引くとするとアナライザー間の差は
  ほとんど無いように思えます。また, AA-1000は200MHzまでなら
  非常に安定しているようです。
ダミーロード AA-1000/230PRO比較

 2)AA-1000でMODEL 370, D21Mを1GHzまで計測
  MODEL 370は18GHz対応機種のため非常に良い特性です。
  手に持ったまたとか机に置いた状態など何度か計測し直しまたが
  値の変化が少なく, 周囲環境に対する対策がされている印象です。
  なお, MODEL 370計測のみCALを実施しています。
  [3/9追記]
  記述間違いです。MODEL 370は変換コネクターは介在せず直接
  アナライザーに接続し計測していますので本来CALする必要は
  ありません。計測値そのものは合っていると思いますが。

  D21Mは表記規格「600MHzでSWR1.15未満」を達成しています。
  但し, M型変換コネクターを介在しており, かつCAL未実施のため
  実際の性能より悪い計測結果かも知れません。
ダミーロード AA-1000 1GHz計測

2.ディスコーンアンテナ計測
 計測に使用したアンテナ
 コメット CDS-150 25~1300MHz ディスコーン
コメット CDS-150

 1)CDS-150を使ってAA-1000/AA-230PROを比較
  本来なら数学的な比較とか必要でしょうが, そういう知識もなく
  見た目の判断ですが低SWR領域ではグラフの重なりが多く同等の
  計測結果と思います。
ディスコーン AA-1000/230PRO比較

 2)AA-1000で1GHzまで計測
  M型変換コネクターを介在しており, CAL未実施のため正確な計測値
  なのか不明です。でも, 周波数変化で小刻みにSWRが変わる現象は
  ディスコーンアンテナ特有のものと, このグラフを見て判断
  出来ます。
  [3/9追記]
  アンテナはRG58A/Uケーブル10m, 1本を介して屋外設置です。
ディスコーン AA-1000 1GHz計測

今回の評価で
AA-230PROとAA-1000で計測結果にさほど差が無い印象です。
AA-1000は1GHzまで安定して計測出来るように思われます。

今後の予定
1)カラーTFT 320x240 の使い勝手を検証
2)AA-230PROとAA-1000で各種アンテナの計測比較
3)AA-230PROとAA-1000でTDRモードを比較
4)AA-1000で430MHzの各種アンテナを計測
など

新型アンテナアナライザー《AA-1000》購入
リグエキスパート《AA-1000》使用感 その2 較正
RigExpert《AA-1000》使用感 その3 画面表示
アンテナアナライザー《AA-1000》2.6GHz拡張

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2012年2月11日 (土)

新型アンテナアナライザー《AA-1000》購入

リグエキスパートジャパン社のフラグシップアンテナアナライザー「AA-1000」を購入しました。国内1号機です!
リグエキスパート AA-1000

おそらく世界にまだ数10台しか無い最新型です。価格99,800円+送料!さすがにおいそれ買えない価格ですね。

アンテナアナライザー「AA-230PRO」を購入してから1年半以上になりますが, その優れた性能と操作性に何の不満も無く活用しておりました。

AA-230PRO関連でアップした記事
アンテナアナライザー《AA-230PRO》購入  2010年5月26日
リグエキスパート《AA-230PRO》使用感 その1
リグエキスパート《AA-230PRO》使用感 その2
リグエキスパート《AA-230PRO》使用感 その3
アンテナアナライザー《AA-230 PRO》使用感 その4
RigExpert《AA-230PRO》ソフトの対応
アンテナアナライザー《AA-230PRO》リモート運用
22年目の真実? ミズホ《AN-21》アンテナ特性
盲点だった? 《144/430モービルアンテナ》 SWR特性
ディスコーンアンテナ SWR比較

しかし, AA-230PROは周波数範囲が230MHzまでのため物足りないとの思いもありました。

1)430MHzのアンテナを計測出来ない。
2)地デジに移行しUHF帯(~770MHz)の特性把握がより重要となっている。

UHF帯計測は, 無ければ無いで何とかなりますが, あるにこしたことはない。この要求に答えるものとして同社のアンテナアナライザーでは520MHzまで計測可能な「AA-520」がラインナップされていますが, 地デジを考慮すると周波数範囲がもっと高いものが欲しい, AA-520はAA-230PROより若干性能が低い, 135KHz計測に対応していないとの理由で当初から購入候補となっていませんでした。

そこでUHF帯計測については手持ちの簡易スペアナ「GigaSt Ver.4」を活用することにしました。GigaSt V4は7GHzまで計測出来るので周波数範囲は十分以上です。

手持ちの簡易スペアナ「GigaSt Ver.4」
GigaSt Ver.4

但し, スペアナでSWRを計測するためにはトラッキングジェネレーター(TG)とリターンロスブリッジが必要です。GigaStはTGを内蔵していますので, リターンロスブリッジのみ準備すれば良いことになります。しかし, なかなかリターンロスブリッジを売っていない。ネットでたまに見かけても数万円と高額で手が出ません。なのでネット記事を参考に自作することにし, 昨年12月に一通り部品, 工具を購入していました(特性的にUHFまで計測出来るのか怪しいところはありますが…)。

リターンロスブリッジ自作用に買い集めた部品, 工具類
リターンロスブリッジ用部品, 工具

いつ重い腰を上げてリターンロスブリッジの製作を開始しようかと思っていたところ, たまたま年末にリグエキスパートジャパン社のJA1SCW/日下社長とメールでやり取りする機会があり「AA-1000」をご紹介頂きました。

スペック比較

項  目 AA-54 AA-230PRO AA-520 AA-1000
周波数範囲 0.1-54 MHz 0.3-230 MHz 1-520 MHz 0.1-1000 MHz
最小周波数ステップ 1 kHz
最小スィープ範囲 10 kHz 100 kHz 10 KHz
SWR2AIR モード
リアクタンス符号(C性 or L性)
コネクター形状 M N
出力電力 +13 dBm +10 dBm +5 dBm -10 dBm
出力アンプ CMOSロジックチップ Tr保護回路付き LVDSロジックチップ
出力波形 矩形波 サイン波 サイン波  矩形波
SWR測定用基準インピーダンス 50/ 75 Ω 25/ 50/ 75/100 Ω 50 Ω 25/ 50/ 75/100 Ω
ADC 10 ビット 16 ビット
バッテリー 単三アルカリ電池またはニッケル水素2  単三ニッケル水素4本組 単三アルカリかニッケル水素3本
バッテリー電圧表示
外部電源駆動 USB ACアダプター 9-12V USB
内蔵充電器
LCD モノクロ 132x64 モノクロ 128x64 カラーTFT 320x240
TDRモード 内蔵 内蔵
グラフ保存メモリー数 100 SWR:90 100 SWR:90
TDR:10 TDR:10
日本語表示 可 カタカナ 可 漢字
ハムバンドプリセット
スミスチャート表示 AntScope 本体でも可
較正モード 内蔵
価格 32800 59800 59800 99800

高額ですが, AA-230PROと同等性能, 0.1MHz~1GHz計測, 320x240TFTカラー液晶など, アンテナアナライザーとしてはどの切り口から見ても他に類を見ない最新最強スペックです。

「まさにこれだ!」と思い正月早々, 日下社長にメールし内示発注させて頂きました。

そして, 本日2月11日に待ちに待ったAA-1000が届いた次第です。
リグエキスパート AA-1000
リグエキスパート AA-1000
リグエキスパート AA-1000

AA-230PROとの比較なども交えて次回以降に使用感を報告させて頂きます。

なお, 私が購入した機種は初期ロットで, 正式発売は3月以降のようです。

今回はへそくりが足りず小遣い前借りで購入しました。その費用をヤフオク出品などで工面しなければなりません。さて, どうしたものか…

アンテナアナライザー《AA-1000》使用感 その1
リグエキスパート《AA-1000》使用感 その2 較正
RigExpert《AA-1000》使用感 その3 画面表示
アンテナアナライザー《AA-1000》2.6GHz拡張

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2011年12月30日 (金)

バイブル《日本の業務用受信機 16版》購入

国産業務用受信機における有史?以来のメーカーや機種, 諸元を知るための国内での総合的なバイブルと言えば, 金道英雄さんの著作である「日本の業務用受信機」が有名で, 他に類を見ない広範で詳細なデータベースとなっています。

「日本の業務用受信機」は1993年発行の第1版から今年2011年までなんと18年間におよぶアップデートをたゆまず続けられており, 2011年3月発行の16版が最新となっています。

「日本の業務用受信機 16版」 紹介ページ

この書籍は金道さんの自費出版によるもので, 私は2008年に14版を購入させて頂き, 今回3年半ぶりに16版を購入させて頂きました。14版の302ページに対し16版では掲載機種の追加などにより327ページに増加しており, かつ記述内容の精度を高め, 掲載されている写真も大きく見やすくなり, よりいっそう資料としての価値を高めています。まだ掲載に至っていない機種があり, また現代では衛星通信の普及などで短波帯業務用受信機の需要が落ちている状況ですが, それでも新技術を投入した新型機が登場していますので今後とも改版を続けていくそうで, 次回第17版は2, 3年後の発刊となるとのことです。

この書籍を読むたびに,「どうしてアマチュア無線機の分野ではこのような総合的で常に最新の横串が通った資料が存在しないのだろう?」といつも落胆しています。ならば"私が"と言いたいところですが, 金道さんほどの知見も持っておらず, 何より根性が足りないところが痛く, 全く踏み切れないでいます(金道さんは全国の漁業無線局を訪ね歩くことでよりいっそう資料の価値を高めていますが私にはその情熱が足りない…)。それでも私のホームページに掲載されている「カタログで見るHFアマチュア無線機の歴史」はそれなりの役割を果たすことが可能な存在と認識しており, 1機種ごとのページを作成し, カタログの写真を大きく掲載, 年代や諸元, 概要, 価格などを載せるだけでも十分に価値ある情報となっていくと思っています。1機種1ページ掲載はホームページを立ち上げた当初から私自信の夢でしたが, 相変わらず腰が重くて全く進んでいません。来年こそは少しづつでも歯車を回したいところです。

とは言っても腰が重い。さて, どうしたものか…

日本の業務用受信機 16版

日本無線/JRC NRD-71解説ページ

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2011年10月31日 (月)

簡易スペアナ≪FRMS2≫製作準備開始

アマチュア無線関連でアンテナの調整や高周波機器の自作などで深みにはまっていくと, どうしても欲しくなるのが高周波系の高価な測定機です。

無線機テスターやスペクトラム/ネットワークアナライザーがあればほぼどのような測定も可能ですが, 如何せん非常に高額です。新品で数100万円, 中古で数10万円。今どきは普及帯のアマチュア無線機でも30万円くらいしますので, だとすれば, 中古のスペクトラムアナライザーなら購入も可能と言えないことも無いのですが, さすがに個人で数10万円も出す人は少数と思います。

と言うことで, 出来るだけ安価でありながらも使用目的にあった測定機を求めて暗中模索となります。

私が導入した高周波用測定機器 (カッコ内は入手月)
1)SWR, パワー計  (2007年5月)
 ダイワ 「CN-101」 1.8MHz~150MHz
2)アンテナアナライザー (2010年5月)
 リグエキスパート「AA-230PRO」 0.3MHz~230MHz
3)オシロスコープ (2010年9月)
 岩崎通信機「SS-6613」 アナログ ~60MHz
4)簡易スペクトラムアナライザー (2010年10月)
 「GigaSt Ver4」 ~7GHz

取り敢えずこれだけあれば大抵の用事は済むはずですが, 無線機器の自作や調整となると, 使える機器が無く困ってしまいます。

例えば, ヘテロダイン受信機の中間周波数(IF)で使用されるフィルター(455KHz~10MHzくらい)の特性を計測するためにはHF帯でかつ, 1Hzステップでトラッキングが可能なスペクトラム/ネットワークアナライザーが必要です。手持ち機器ではGigaStが簡易スペクトラムアナライザーの機能を持っているのでフィルターを計測出来そうですが, 周波数ステップが10kHzと荒く帯域幅が6kHzだとか300Hzだとかのフィルターを計測することは出来ません。なので, 何とかしたいと思っていました。

この目的に合致した測定器として, CYTEC/サイテックさんのところで考案して頂いた「FRMS」と言う周波数特性測定システム(簡易スペクトラムアナライザー)があります。
フィルターの測定などHF帯狭帯域特性の計測を目的に考案, 開発されたもので, 特徴は何と言っても非常に安価に準備出来ることです。全ての部品を購入したとしても2万円程度で済みます。

但し, 唯一の難点は, 部品の発注, 電子部品の取り付け, ハンダ付け, アルミケースの加工, 部品の組み付けなど全て自分でおこなう必要があることです。

電子工作が好きだとか, 慣れているとか, それが仕事だとかと言う方は苦も無いでしょうが, 年に数回ハンダコテを握る程度のにわかラジオ中年には非常に敷居が高く, 今まで越えることが出来ない壁でした。

しかし, それではいつまでたってもラチがあかないので(仕事も同じですね),意を決して部品を発注し製作を開始することにしました。まずは部品が無いと次に進まないと言うところもあります。

最初の難関は小遣い, へそくりが無いことです… 悲しいかな2万円を払うことが出来ません。ヤフオク出品で捻出予定でしたが, こちらも腰が重くて思うように進まず, 結局は嫁さんから前借りしての部品発注となりました。
※パソコンや学習用書籍など趣味用か内職用かグレーで判別出来ないものは家計持ちで購入しておりちょっと高額でも買えますが, 完全に趣味のものは少ない小遣い(月5千円)からやりくりして購入しており, 日々赤貧との戦いとなっています。なので, どうでも良いのですが, 自分で嗜好食品を買うようなことは殆どありません(ましてや義務以外で飲み屋に行くことなど一切無い)。

まずは, CYTECのJE1AHW/内田さんに連絡して, FRMSのプリント基板とプログラム書き込み済のCPU(PIC)を譲って頂きます。
なお, CYTECでは回路図, 基板のデータ, 部品一覧表などの必要情報をWebで公開しているため, その気になれば, プリント基板なども製作可能です。
私はエッチング機材, PICに書き込む機材や製作経験そのものが無いため内田さんにお願いしました。基板は内田さんの手作りだそうですが, 綺麗に出来上がっており満足いくものです。
CYTECから基板を購入すると, 基板の他, Webでの公開情報と+αの情報が納められたCDが添付されてきます。

1)FRMS基板キット 1set  \3000(税, 送料込み, CD付き)
2)PIC16F873      1set  \1400(税込み)
                 合計  \4400(税金, 送料込み)

なお, FRMSとは「Frequency Response Measuring System」の略で, 2011年10月現在「第4世代」となっており, 2世代目から「FRMS2」の名称となっています。
今回は最新バージョンの第4世代目(OPアンプがLM7171仕様)の回路を採用しています。

CYTECから届いたFRMS基板, CPU, CD
FRMS 基板とCPU

JE1AHW氏作のFRMS基板 きれいに仕上がっています
FRMS基板 JE1AHW氏作

後は, パーツリストの情報を元に不足部品をパーツショップに発注します。私は, 抵抗, コンデンサー, トロイダルコア, 同軸ケーブル, スペーサーなど一部手持ち部品がありましたが, 残りの殆どをパーツショップ(秋月電子とマルツパーツ館)から購入しました。購入総額13,269円。
手持ちパーツの全部を購入したとするとたぶん+3000円前後くらいだと思います。CYTECさんからの購入4,400円+13,269円+3,000円+振込代=21,000円+αくらい(若干オリジナルの仕様と異なっていますので, オリジナルならちょっと安いと思います)。

コアパーツ 秋月電子 DDS2キット
秋月電子 DDS2キット

IC類
IC類

抵抗, コンデンサーなど(多めに準備しています)
抵抗, コンデンサーなど

線材類
線材類

購入部品でオリジナルと異なる点がいくつかあります。
1)径10mmの10kΩ可変抵抗が生産中止品になっています。
 ネットのパーツショップでも売っていません。廃版部品専門店で
 1個30円で買えますが送料, 手数料が1300円だったりします。
 秋葉原なら楽に見つかると思いますが, 地方の方は非常に入手が
 難しい部品です。内田さんに相談したところ, グラフの表示位置
 を可変させるための抵抗で, 機能を果たせばどのような形状でも
 良く, 10kΩでも100kΩでも良いとのことで, 適当に穴開けして取
 り付けて頂いて良いとのことです。
 私の場合, 幸い, たまたま立ち寄った会津若松唯一のパーツショッ
 プに10mm径30kΩのそのまま取り付け可能な可変抵抗が置いてあっ
 たため1個買ってきました。

たまたま手に入った30kΩの10mm径可変抵抗
30kΩの10mm可変抵抗

2)コモンモードノイズ防止用に大型のトロイダルトコアを準備しまし
 た。
 効果があるのかどうか不明ですが, 後で困らないように, これでも
 か言うくらい大きなもの(アミドン FT-114, 43材)2個を準備しまし
 た。同軸ケーブルのところに使う予定です。そのため同軸ケーブル
 も極細のものを数m準備しています。
3)ケースを指定のタカチYM-180から1サイズ大きなYM-250に変更してい
 ます。
 大型コアを置けるように大きめのものにしました。

タカチ ケース YM-250
タカチ ケース YM-250

4)他の配線のコモンモードノイズ対策にコアを準備しました。
 高周波機器経験の少ない私が言うのもなんですが,「電線をみたら
 アンテナと思え」との自前の教えに基づき, 同軸ケーブル以外のケ
 ーブルにもフェライトコアを入れることにしました。電源ケーブル,
 RS-232Cケーブルに取り敢えずアイミドンの「FB801」を入れます。

ケース加工のためポンチ, リーマーも購入
ポンチ, リーマー

残りの購入部品はミノムシクリップぐらいで, ほとんど準備が整いました。

機は熟した。

あー, でも腰が重い。さて, いつ完成することやら…

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2011年10月30日 (日)

JARL福島県支部≪ハムの集い2011≫ 2011/10/23

毎年場所を変えて開催されている福島県のハムの集いですが, 今年はいわき市で開催予定でした。ところが東日本大震災, 原発事故に伴い, 急遽会津若松市に場所を変更しておこなわれることになり, 1週間前の10月23日(日)に猪苗代湖近くの会津若松市施設「会津若松市基幹集落センター」で無事に開催されました。

ハムの集い 会場
ハムの集い 会場

私はこのハムの集いに駐車場係として参加しました。当日は13時ころから雨がちらほら降り始めましたが, それまでには来客も一段落し, 濡れることはありませんでした。また, 駐車場が狭くて, 遠い空き地に停めて頂くなど来場者にはご迷惑をお掛けしましたが, 事故も無く終えることが出来ました。

運営責任者JA7BCE局の話しでは来場者を180人ほどと見込んでいましたが隣県からもおこし頂くなどで200名ほどとなり, 盛況に終えることが出来ました。

ところで, 一番の目玉と言えば「お楽しみ抽選会」でしたが, 私はJG7JIP局が描いた白虎隊図柄のQSLカードをゲット出来ました。

残念だったのは,駐車場係だったため抜け出せずジャンク市ではすでに目ぼしいものが売れた後でした。来年は早めに来場して良い品をゲットしたいところです。

気がかりな点と言えば, 来場者の多くが中年以上の方で若い方が殆どいなかったことです。大変残念ですが通信環境や趣味の多様化でアマチュア無線そのものが斜陽化であるこは否めません。

QSLカードを消費する必要があり, またPRのためにもボチボチ無線活動を再開したところですが相変わらず腰が重い。さて, どうしたものか…

ハムの集い 会場入り口
ハムの集い 会場入り口

初めて見た車載鉄塔 高さ10mくらい?
車載鉄塔

ジャック市の一部
ジャック市

JR7DAR主催のARDFコーナー
ARDFコーナー

往年の受信機の数々 欲しい!
往年の受信機

放射線が飛んでいる様子を実際に見てみよう!!
いばらきネットアマチュア無線クラブ
放射線が飛ぶ様子

α(アルファ)線が実際に飛んでいる様子を体験出来ました。
α線が飛ぶ様子

GETしたJG7JIP作画のQSLカード
GETしたQSLカード

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2011年8月28日 (日)

ハムフェア2011

今年も東京ビックサイトで開催されたハムフェアに行って来ました。土曜日初日の朝9時に着いたのですが既に200人くらい並んでいて, 開催10時には1000人くらいになり結構盛況な様子でした。

まずは恒例のアウトドア抽選会ですが, 何と12回抽選(1回100円)して全て外れました。んー, 残念。来年に期待です。
アウトドア
アウトドア 抽選外れ

戦利品は帽子2個, ボトルホルダー1個, ストラップ1本, ボールペン1本です。
戦利品

購入品はGHDブースからパドル用コードプラグ1本(800円)のみです。
GHD パドル用コードプラグ

プレゼンテーション
さて, 大手3社(バーテックス, アイコム, ケンウッド)のプレゼンを見て, 今年のキーワードは「V/UHF帯のデジタル通信」だと感じました。

バーテックスは次世代FDMA方式「C4FM(4値FSK)変調」のハンディ機を2012年に投入, と紹介しています。また, VoIP通信「WiRES-Ⅱ」を紹介していました。
バーッテクス デジタル通信
バーッテクス WiRES-II

アイコムは新型430MHzハンディ機「ID-31」を紹介しています。GPS, IPX7防水など最近のトレンドを乗せつつコンパクトに仕上がっています。
アイコム ID-31

ケンウッドはハンディ機「TH-D72」で楽しむ「APRS(ビーコンメッセージの送受信)」を紹介しています。
ケンウッド ARPS

花形HF機の登場も一巡し今年はちょっと小粒の印象ですが, 各社ともV/UHF帯の巻き返しで足並みを揃えているように思えます。

ケンウッド完全復活の, のろし
昨年登場したコンパクトHF機「TS-590」で復活を果たしたケンウッドですが, TS-900, TS-820, TS-930…TS-950SDXに続く「HFフラッグシップ機の開発に着手」とアナウンスがありました。いよいよ完全復活となりそうです。ただ, まだ開発初期段階とのことで発売時期や価格など一切未定のようです。
ケンウッド HFフラッグシップ  TS-820
ケンウッド HFフラッグシップ 開発着手

速度メーター180kmなリニアアンプ VL-2000
昨年参考出品で展示されていたバーテックスの新型HFリニアアンプ「VL-2000」が今年も展示されていました。1.5kW常用が可能とのことですがワットメーターには2kWまで目盛られています(何と言うか…カッコ良い)。発売時期未定とのことですが, 昨年はいっさい詳細が明かされなかった仕様, 諸元ついて, 今年は英文カタログのかたちで公開され, 煮詰まってきた印象です。リニアアンプは男のロマン。久々の新型リニアに何だかワクワクです(買えませんが)。

VL-2000/VP-2000 主な仕様
1.8MHz~50MHz
HF 1.5kW(米国仕様?), 50MHz 1kW
ファイナル VRF2933 × 8
200V/16A 1.5kW出力時
200V/13A 1kW出力時
100V/17.5A 500W出力時
VL-2000 482mm × 177mm × 508mm , 24.5kg
VP-2000 482mm × 177mm × 508mm , 19.0kg

VL-2000(参考出品)
ヤエス VL-2000
VL-2000 2kWなメーター
VL-2000カタログ(英文)
VL-2000カタログ(英文)

重りのいらないパドル Pegasus
GHDキーが開発?  CQ出版社が発売しているマウス型パドル「Pegasus(ペガサス)」がGHDキー社のブースで紹介されていました。触ってみて今までに無い操作感ですが, 経験不足の私には実用度を判別出来ませんでした。それでも超小型の割に打ちやすい印象で見た目も奇抜なためコレクションとして是非入手しておきたい一品と感じました。
マウス型パドル Pegasus(ペガサス)

エレメント長さ可変HF八木アンテナ Ultra Beam
FTIのブースにイタリアUltrabeam社のアンテナが展示されていました。FTIは輸入代理店のようです。原理的にはBeam Quest社のアンテナと同じのもの(モーターでエレメントが巻かれたり伸ばされたりする)と思われます。難点は代理店経由のためか少々高額になっていることです(375,000円~778,000円, 但しBeam Questとは比較未)。それからBeam Questの場合, U字構造の省スペースアンテナがラインナップされていますが, Ultra Beamはフルサイズのみです(7MHzでエレメント長21.5m)。HFアンテナの本命はエレメント長さ可変タイプと思っており, いつか資金を貯めて導入したいと夢見ています。Beam QuestかUltra Beamか… 今後も双方の性能, 価格, 耐久性などを注視していきたいと思っています。
Ultra Beam(代理店 FTI社)

フラッグシップアンテナチューナー CAT-3000
コメット社のブースで3Kw仕様の超高額アンテナチューナー「CAT-3000」(315,000円)が展示されていました。昨年は参考出品でしたが今年は発売となったようです。内部を見ると職人のこだわりのような優美さが感じられ超高額も納得と思われます。
コメット CAT-3000
コメット CAT-3000

ところで, ケンウッドの完全復活ですが, 考えてみると何かまだ足りません。そう, 「HF帯のkWリニアアンプ」がラインナップにありません。ケンウッドには日本無線からのOEMで「TL-933」と言う機種がラインナップされていましたが, 日本無線のアマチュア無線機器撤退に合わせて数年前に廃番になりました。新型リニア「TL-944」の登場こそが本当の意味での完全復活かも知れませんね。
TL-933の元機「日本無線 JRL-3000F」
TL-933の元機「日本無線 JRL-3000F」

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